みなさんおはようございます。
この記事では日本語専任講師歴7年以上の経験から、N4文型「~てしまう(完了)」の使い方、導入例文、前件後件のルール、よくある間違いなど詳しく解説していきます。日本語学習者にはわかりやすく、日本語教育者には指導の参考になる記事を提供できるよう頑張りますので、是非最後までご覧ください。
目次
今日の文型 「てしまう」
導入
導入例①【一週間で全部読んでしまいました。】
日本でとても有名です。
とてもおもしろいから、1週間で全部読んでしまいました。
とてもおもしろそうですね。
導入例②【おいしかったので、1日で食べてしまいました。】
説明①
マンガを全部読んでしまいました。
お土産を食べてしまいました。
マンガを1巻から31巻まで読んでしまった。
お土産を1日で食べてしまった。
解説(日本語教師向け)
ここからは日本語教育者向けの解説をしていきます。
意味
あることをすべて完了したことを表す
接続
動詞テ形+しまう
前件/後件のルール
ルールA 基本的に過去の形にする
「てしまう」は物事を完了したときに使う文法です。そのため基本的には過去の形「てしまった」や「てしまいました」で使います。
おいしかったので、1日で食べてしまいました。
基本的には過去の形で使いますが、ある条件の時には現在の形「てしまう」や「てしまいます」を使うことがあります。それは”今していることをすべて完了させる”という意思表示の時です。これは完了するのが近い未来になるので、現在の形で表現することになります。
Aさん:もう遅いから帰ったら。
Bさん:この件だけは今日中に終わらせてしまうよ。
今している作業がもうすぐ終わるので、完了するまでしてから帰るという意思表示です。作業が完了するのは、近い未来のことなので、過去の形にはしません。
この表現は日常生活でも使う場面があるので、どういう意味で使っているか、いつ作業が完了するのかという時制を理解できるようにしましょう。
ポイント
①完了したことを強調したいときに使う
「てしまう」は全てが完了したということを強調したいときに使う表現です。またその完了したことが普通とは違っていて、驚きやすごさを表現したいときによく使います。そのため短い時間で完了したという場面が多く、それを伝えるための言葉を一緒に使うことが多いです。どんな言葉と一緒に使うか覚えておきましょう。
一緒に使う言葉:もう、たった、全て、~時間で…
②依頼、勧誘などによく使う
「てしまう」は自分が物事を完了させたときよりも、他人に依頼するときや他人を勧誘するときに使うことが多いです。依頼や勧誘の使い方は学習者が耳にする可能性が高い表現です。使えなくても問題ないですが、聞いて理解できるようにしておきましょう。
・もうすぐ出るので、全て飲んでしまってください。
・あと少しなので、みんなでやってしまいましょう。
③会話では「ちゃう」を使うことがある
「てしまう」には会話表現で使う縮約形という形があります。縮約形は以下の通りです。
てしまう⇒ちゃう
でしまう⇒じゃう
縮約形「ちゃう」はくだけた会話に使う表現です。家族や友達など仲のいい人との会話に使います。目上の人や初対面の人に使うと失礼なので気をつけましょう。
④”完了”と”残念や後悔を表現する”という2つの使い方がある
「てしまう」は2つの使い方があります。1つ目が”完了”、2つ目が”残念や後悔を表す”です。接続が同じ「Vテ形」なので、文脈からどちらの使い方か判断する必要があります。”完了”の使い方だとすぐに判断できるのは、『他人への依頼や勧誘』か『今の作業をすべてやるという意思表示』の2つです。その他の使い方は文脈からの判断が難しいです。その他の使い方の違いは⑤で解説します。
関連記事:N4文型 「てしまう(後悔)」
⑤基本的に感情が必要
「てしまう」は”完了”を表現するときに使いますが、”完了”は「~ました」で表現することができます。以下の文をご覧ください。
夜ご飯を食べました。
この文を使うと『夜ご飯を食べて完了している。』ということを伝えることができます。この場合は「夜ご飯を食べてしまいました。」と言うことはしません。
では、比較をしてみましょう。
例1
A:ドラマを全話見た。
=全話見て完了したという事実を伝える。
B:ドラマを全話見てしまった。
=①短時間ですべて見た。それぐらいおもしろいと伝えたい。(完了)
②ほかにやりたいことがあったのに、全話見たので後悔している。(後悔)
ただ完了した事実を伝えるのであれば、Aの文でで伝わります。もしBの文を使うと完了したということだけでなく感情が入ります。
例2
A:お菓子を全部食べた。
=買ってきたお菓子を全部食べて、もう残っていない。
B:お菓子を全部食べてしまった。
=①買ってきた大量のお菓子をすぐに全部食べた。他の人にすごいと伝えたい。(完了)
②買ってきたお菓子を全部食べて、後悔している。(後悔)
例2も例1と同じで、Bの文には感情が含まれています。Bの文を日本人が使うときは、②の”後悔”の意味で使うことがほとんどだと思います。
例3
A:宿題を全部終わらせた。
=今日の宿題を全部やり終わった。
B:宿題を全部終わらせてしまった。
=たくさんの宿題を授業後すぐに終わらせた。すごいことを伝えたい。(完了)
こちらもBの文には、すごいということを伝えたいという感情が含まれています。
以上のことから「てしまう」を使う時には、感情が含まれていることがわかります。”完了”の事実を伝えるときには「ました」を使って、”完了+感情”のときは「てしまった」を使いましょう。
続いてポイント④で解説した、”完了”と”残念や後悔を表す”の使い方の判断でについてみてみましょう。例文を見てわかるように、文脈ではどちらの解釈もできることが多いです。この1文だけで判断することはできないので、前後の会話や表情などから判断しなければなりません。学習者には難しいかもしれませんが、何度か聞いているうちに慣れてきます。また「そうなんですね」と返事をすると会話が成立するので、わからない時におすすめです。
学習者によくある間違い
・意味は正しいが、会話では使わない表現
学習者はよく”完了”を伝えるために「てしまう」を使います。しかし日本人は会話で使わない時にも使っていることがあります。”完了”を伝えるという意味は正しいのですが、日本人は使わないので聞くと違和感を感じることになります。そんな時は完了を伝えるときには「ました」で十分だと伝えましょう。
作文を書き終わりました。=日本人が使う会話表現
作文を書き終わってしまいました。=日本人が使わない会話表現
まとめ
・物事の完了を伝えるときに使う
・短時間や大量のことを完了させたことを強調する
・依頼や勧誘によく使う
・基本的に過去の形にする
・後悔などの感情が含まれることが多い
以上「てしまう」の解説でした。ここに書いてあること以外の疑問や質問はコメントをお願いします。最後までご覧いただきありがとうございました。











