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N2文法

N2文型 「~とする・~とされる」

【教案・文法解説】「〜とする・〜とされる」徹底攻略!「決定・規則」と「客観的事実」の使い分け・「〜と言われている」との違いと指導法


「能動型の『〜とする』と受身型の『〜とされる』はどう教えて分ければいいの?」「『〜と言われている』や『〜と考えられる』との違いを学生に聞かれたら、どう説明すれば納得してもらえるだろう?」

日本語学校の現場で中上級クラスを担当する際、このような指導上の課題に突き当たった経験はありませんか?「〜とする・〜とされる」は、JLPT(日本語能力試験)N3〜N1レベルの文法問題はもちろん、新聞、論文、公式文書からEJU(日本留学試験)の記述問題まで幅広く登場する超重要文型です。

しかし、学習者にとっては「能動と受身の機能差」が掴みにくく、個人の意見で「〜とされる」を使ってしまったり、丁寧体に接続してしまったりする誤用が絶えません。単なる日常会話を脱し、主観から客観的なアカデミック・ライティングへとステップアップさせる上で、本文脈の指導はまさに教務上のキーポイントとなります。

この記事を読むことで、以下の4つの解決策とメリットが得られます。

  • 能動型「〜とする」と受身型「〜とされる」の明確な機能差、構文パターン(「N1をN2とする」含む)、接続ルールがすっきり整理できる
  • 「〜と言われている」「〜と考えられる」「〜ことにする」など類似文型との境目を、論文・レポート指導に活かせる比較表で視覚的に把握できる
  • 現場で多発する代表的な誤用例と、教室で教師がそのまま発話できる「効果的な切り返しフレーズ」が手に入る
  • 明日の授業ですぐ使える導入場面案、T&S発話展開モデル、およびテキストベースの板書レイアウト案を網羅できる

それではまず、本文型の確実な指導の土台となる「基本スペック(接続と2つの大分類)」から確認していきましょう。

2. 基本スペック(接続と2つの大分類)

2.1 接続ルールとフォームの整理

「〜とする/〜とされる」は、原則として普通形に接続します。ナ形容詞および名詞に接続する場合は「+だ」を伴って「〜だとする/〜だとされる」となります。

丁寧体(です・ます形)には接続できません。また、名詞修飾型として「〜とする+N」や「〜とされた+N」(例:「〜とされた事」「〜とされる方法」)の形でも頻出します。

さらに構文パターンとして、節を繋ぐ「〜(だ)とする」だけでなく、対格形式の**「[名詞1] + を + [名詞2] + とする」**(例:参加費を3000円とする、彼をリーダーとする)という目的語を取る形も非常に重要です。指導時には、この2つのパターンを整理して提示すると学生の理解が深まります。

品詞・活用形態接続ルールと接続例
動詞(普通形)V(普通形)+ とする/とされる<br>(例:使用が多い とする/とされる)
イ形容詞(普通形)イ形(普通形)+ とする/とされる<br>(例:効果が高い とする/とされる)
ナ形容詞(普通形)ナ形(普通形・+だ)+ とする/とされる<br>(例:効率的だ とする/とされる)
名詞(普通形)名詞(普通形・+だ)+ とする/とされる<br>(例:象徴だ とする/とされる)<br>※構文パターン:**「N1 を N2 とする」**の形も可能

※丁寧体接続(×「〜ですとされる」)は不可である点、ナ形容詞・名詞の「だ」の要否について徹底して指導しましょう。

2.2 用法①:能動型「〜とする」(決定・規定・仮定)

能動型の「〜とする」は、大きく分けて**「①決定・規定(ルール宣言)」と「②仮定・見なし(論理的設定)」**の2つの機能を持ちます。

  1. 決定・規定(ルール・公式発表) 主体(主催者、組織、決定権者など)が制定した規則・法律・公式な決定事項を公に宣言・規定する機能です。「〜と決定する」という意味合いで用います。
  2. 仮定・見なし(数学・論理的記述) 特定の条件や前提を一時的に設定・定義する機能です。「〜と仮定する・〜と見なす」という意味で、数学の問題、論文、論理的作文などで頻出します(例:「〜と仮定して話を進める」ニュアンス)。

【例文】(※「N1をN2とする」の対格形式を含む)

  • 他《ほか》の者《もの》の答《こた》えを見《み》た場合《ばあい》は、0点《てん》とする。
  • 名前《なまえ》の記入《きにゅう》を忘《わす》れた場合《ばあい》も、0点《てん》とする。
  • 試験《しけん》の点数《てんすう》が30点《てん》以下《いか》の場合は、もう一度《いちど》試験《しけん》を受《う》けることとする。
  • パーティーの参加費《さんかひ》は一人《ひとり》3000円《えん》とする。(※「参加費《さんかひ》を3000円《えん》とする」も可)
  • 服装《ふくそう》は自由《じゆう》とする。
  • パーティーは立食《りっしょく》パーティーとする。
  • (仮定)三角形《さんかくけい》の底辺《ていへん》をXとする。
  • (仮定)ここでは条件《じょうけん》を満《み》たした者《もの》を合格者《ごうかくしゃ》とする。

2.3 用法②:受身型「〜とされる/〜とされている」(社会的通念・客観的見解)

受身型の「〜とされる/〜とされている」は、世間一般、社会、あるいは専門家の間で広く認められている社会的通念、常識、学術的定説、法律、習慣について述べる機能を持ちます。話し手個人の主観を消し、物事を客観的に提示する表現です。

【例文】

  • 鳩《はと》は世界《せかい》的《てき》に愛《あい》と平和《へいわ》の象徴《しょうちょう》とされている。
  • 世界《せかい》的《てき》に13日《にち》の金曜日《きんようび》は不吉《ふきつ》な日《ひ》とされている。
  • オランダでは大麻《たいま》が合法《ごうほう》とされている。
  • 猫《ねこ》の好物《こうぶつ》は、日本では魚《さかな》とされ、イタリアではパスタとされ、インドではカレーとされている。
  • 日本では、お辞儀《じぎ》は礼儀《れいぎ》とされている。
  • 頭《あたま》を北《きた》に向《む》けて寝《ね》る「北枕《きたまくら》」は縁起《えんぎ》が悪《わる》いとされている。
  • 毎日《まいにち》前日《ぜんじつ》の内容《ないよう》を復習《ふくしゅう》することが記憶《きおく》するのに最も効率《こうりつ》が良いとされている。

ニュアンスの解説 話し手個人の考えや直接的な発話ではなく、「社会全体や特定分野で一般的・公式にそのように認識・合意されている」という客観的事実や評価を伝える際に用います。そのため、ニュース、学術論文、説明文書などの硬く論理的な文脈と非常に相性が良い表現です。

基本概念を押さえた上で、学習者が最も混乱しやすい類似文型との境界線を見ていきましょう。

3. 【徹底比較】似ている文型との使い分け・境界線

3.1 比較①:「〜とされる/〜とされている」 vs 「〜と言われている」

  • 「〜と言われている」: 人々の発話、世間の噂、直接的な伝聞(「〜とたくさんの人が言っている」)に焦点があります。親しい会話や一般的な文章で広く使われます。
  • 「〜とされる」: 単なる伝聞を超えて、社会的な認知、公的・公式な合意、または学術的な定説に焦点があり、より硬く公式度の高い表現です。

3.2 比較②:「〜とされる」 vs 「〜と考えられる/〜と見られる」

  • 「〜と考えられる」: 調査データや事実に基づく発信者(書き手)の論理的推論・分析プロセスに焦点があります。
  • 「〜と見られる」: 報道などで、現状の状況証拠から予測される客観的な見通しや推量に焦点があります。
  • 「〜とされる」: 発信者個人の推論を超え、既に社会や専門界で共通認識・定説・合意事項として確立されている内容に焦点があります。

💡 アカデミック・ライティング指導の一言アドバイス

学生がレポートや小論文を書く際、自分の分析結果から導いた考察には「データから〜と考えられる」を使わせ、論文冒頭の先行研究や一般的な定説の紹介には「〜とされる」を使わせるよう指導すると、論理的でメリハリのある文章が書けるようになります。

3.3 比較③:「〜とする」 vs 「〜ことにする」

  • 「〜ことにする」: 個人の日常的な意志決定や個人的なルール決めに焦点があります(例:「今日から毎日復習することにする」)。
  • 「〜とする」: 組織や主催者が公式に定めたルール、規定、公的な取り決めに焦点があります(例:「参加費は3000円とする」)。

【比較一覧表】類似文型の機能とニュアンス整理

文型焦点・ニュアンス使用場面・硬さ例文
〜とされる/〜とされている社会的認知、公的合意、学術的定説、一般常識硬い書き言葉・論文・ニュース・説明文富士山は日本一高い山だとされる。
〜と言われている人々の発話、世間の噂、直接的な伝聞話し言葉〜一般的な文章沖縄の海は日本で一番きれいだと言われている。
〜と考えられる/〜と見られる論理的な推論(考えられる)/状況からの予測・見通し(見られる)論文・レポート・報道過度のアルコール摂取は多数の病気の原因になると考えられている。
〜とする(能動型)組織・公式な決定、ルールの規定、前提の仮定公式アナウンス・文書・規定・数学・論理パーティーの参加費は一人3000円とする。
〜ことにする個人の決断・日常的な意志日常会話・個人的な選択今日から毎日前日の内容を復習することにする。

理論の理解から、実際の教室で起こるトラブル対応への橋渡しとなる具体的な誤用指導法を見ていきましょう。

4. 現場で本当に起こる!「学生のよくある誤用例と指導の切り返し方」

4.1 誤用例①:個人の意見での誤用

  • × 私の意見では、このアニメが一番面白いとされている。
  • ◯ 私は、このアニメが一番面白いと思う。
  • ◯ このアニメは作品評価が非常に高いとされている。(客観的評価)

🗣️ 【指導の切り返しフレーズ】

「『〜とされる』は、あなた一人の意見や好みには使えません。『社会のみんながそう認めている』『専門家の間で定説になっている』ときに使います。自分の意見を言うときはシンプルに『〜と思う』を使いましょうね。」

4.2 誤用例②:丁寧体接続の誤用

  • × 沖縄の海はきれいですとされる。
  • ◯ 沖縄の海はきれいだとされる。
  • ◯ 彼は優秀だとされる。

🗣️ 【指導の切り返しフレーズ】

「『〜とされる』の前の部分に『です・ます』は入りませんよ。普通形に繋げましょう。ナ形容詞や名詞のときは『だ』を忘れないで『きれいだとされる』『優秀だとされる』にしてくださいね。」

4.3 誤用例③:カジュアル会話での誤用

  • × (友達同士で)「明日の飲み会は6時からとするよ!」
  • ◯ 「明日の飲み会は6時からね!」
  • ◯ 「会社の研修は6時からとする。」(公式アナウンス・文書)

🗣️ 【指導の切り返しフレーズ】

「『〜とする』はとても硬い言葉で、ニュースや法律、公式なルールを決めるときに使います。友達同士のカジュアルな会話で使うと、まるで法律を作っているみたいで大げさに見えますよ。」

誤用パターンを把握したところで、実際にこれらを教室でどのように導入・練習させるかの具体案を見ていきましょう。

5. 教室での導入・板書・発話アイデア(教案のヒント)

5.1 導入シチュエーション案

【〜とする】(決定・規定の導入)

  • 場面設定:試験のルール決め
    • 教師:「みなさん、明日テストをします。もしテスト中に他の人の答えを見たらどうしますか? 0点にしますね。これを公式のルールとして書きます。『他の人の答えを見た場合は0点とする』。名前を忘れた場合も『0点とする』です。」

【〜とされている】(社会的通念・常識の導入)

  • 場面設定:世界の文化やマナーの紹介
    • 教師:「日本では麺を食べるとき音を出してもいいですが、海外ではどうですか?『音を出して麺をすするのは、海外ではマナー違反とされている』ですね。また、インドでは『牛は神聖な動物とされている』のように、国の常識や決まりを伝えるときに使います。」

5.2 教室での発話展開モデル(T&S対話)

  • T(教師):「沖縄の海について、たくさんの人が何と言っていますか?」
  • S(学生):「日本で一番きれいだと言っています。」
  • T:「そうですね。個人の発話ではなく、一般的にそう認められている事実として客観的に言うときはどう言いますか?」
  • S:「沖縄の海は日本で一番きれいだとされています!」
  • T:「素晴らしいです!では、みなさんの国で『縁起が悪い』『不吉だ』と決められていることはありますか?」
  • S:「私の国では、夜に口笛を吹くのは悪いマナーだとされています。」
  • T:「いいですね!『〜だとされている』が正しく使えています。」

5.3 「個人(主観)」から「社会・公式(客観)」への視点シフトを視覚化する板書案

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【板書案:客観表現とルールの表現】

 [個人の主観・発話・意志]              [社会・公式(客観・規定・仮定)]
  「〜と思う / 〜と言っている」   ➔   「〜とされる / 〜とする」

 1. 決定・規定・仮定(能動型:〜とする)
    ※組織・ルール制定の公式告知 / 論理的設定
    【構文】普通形 + とする  /  N1 を N2 とする
    ・他の人の答えを見た場合は 0点 とする。
    ・参加費は一人 3000円 とする。(/ 参加費を3000円とする)
    ・服装は自由 とする。
    ・(仮定)三角形の底辺を X とする。

 2. 社会的通念・定説(受身型:〜とされる/〜とされている)
    ※社会常識・定説・法律の客観的提示
    【接続】普通形(ナ形・名詞+だ) + とされる
    ・オランダでは大麻が 合法だ とされている。
    ・音を出して麺をすするのは海外では マナー違反だ とされている。
    ・日本では女の人が男の人にチョコレートを贈る日 とされている。
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実際の授業の流れや板書イメージがつかめたところで、最後に本章の重要ポイントと現場で教える際のアドバイスをまとめます。

6. まとめ・授業のアドバイス

「〜とする・〜とされる」の指導における重要ポイントを要約します。

  1. 能動型「〜とする」は公式なルール規定や仮定の設定、受身型「〜とされる」は社会的通念・定説の客観的提示という機能差を明確に指導する。
  2. 接続は必ず普通形とし、ナ形容詞・名詞の「+だ」の脱落や丁寧体(です・ます)の混同を防止する(「N1をN2とする」の対格パターンも押さえる)。
  3. 「〜と言われている(伝聞)」「〜と考えられている(主観的論理推論)」「〜ことにする(個人の決断)」との焦点や硬さの違いを明確にする。

本文型の深い理解と運用力の育成は、単なるJLPT(N3〜N1)の文法問題対策にとどまりません。EJU(日本留学試験)の記述問題や大学入試小論文、学術レポートにおいて「主観的な思い込み」と「客観的事実・論理的推論」を明確に描き分けるための極めて重要なステップとなります。

学習者が主観的な発話を脱し、よりアカデミックで格式高い日本語を運用できるよう、ぜひ毎日の教案作成や授業準備に本シートをお役立てください。現場で奮闘する先生方の授業が、より実り多きものになることを心から応援しています!

 

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ABOUT ME
タッチメン
日本語学校の専任講師として7年以上勤務をしていて、経験した留学生の疑問や先生の悩みを解決していきます。

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