わかりやすい日本語教育
エッセイ

日本語教育エッセイ 日本語学校で働いている人(営業課)

日本語学校で働いている人といえば日本語教師だと思う人がほとんどでしょう。しかし、日本語学校には規模にもよりますが、多くの部署が存在します。部署の中にも役割があり、いろんな人が働いています。

日本語学校はまだまだメジャーな業界ではありません。日本語学校ではどんな人が働いているか、どんな仕事をしているか、謎な部分も多いと思います。そこで今回は日本語学校ではどんな部署があって、どんな人が働いているのか、どんな仕事をしているのかを紹介します。

 

 

日本語学校には大きく分けて4つの部署があります。

・授業に関すること全般を管理する「教務課」

・学生の生活に関するすべてのサポートをする「学生課」

・学生募集と卒業後の進路開拓を担当する「営業課」

・学校の環境を整えて管理する「総務課」

4つの部署の中で日本語教師が所属しているのは「教務課」だけです。他の部署には日本語教師ではないけれども、外国人と関われる仕事をしたい人が集まっています。

学校によっては1人の職員が部署を兼任していたり、部署そのものがまとめられてたりすることもあります。

基本的には部署ごとに役割がありますが、業務によってはいくつかの部署が合同で行う業務もあります。4つの部署がそれぞれどんな仕事をしているか、そしてどんな人が働いているかを分けて紹介します。

 

営業

日本語学校は義務教育学校ではないので、日本語学校自身で学生を集めなければいけません。そのため一般企業のように、学習募集に特化した営業部が存在しています。

また入学した学生を無事に希望する進路へ進めるように、様々な情報を集めなければなりません。時には大学や企業に訪問して、担当者に直接質問をすることもあります。これを教務課の先生が担当することになると業務が多すぎるので、学校によっては独立の営業部を設置していることがあります。

このように日本語学校の営業部は、日本語学校の入り口(入学)と出口(卒業)に欠かせない存在です。そんな営業部にはどんな人が働いていて、どんな仕事をしているか詳しく紹介します。

 

現地営業(学生募集)

日本語学校で代表的な営業は学生募集を担当する現地営業です。

多くの日本語学校は、募集する学生の出身国を絞っています。例えば私の日本語学校では中国の学生をメインに募集活動を行っています。

募集する国を絞る理由としては、まず複数の国で募集活動をするには経費が掛かりすぎるからです。他にもいくつか理由がありますがこれは別の記事で紹介します。

現地営業は学生募集をメインで行う国を実際に訪問し、現地の高校や大学など日本語教育を行っている機関へ営業を行います。日本語学校の規模にもよりますが、現地に事務所を作りそこを拠点に営業活動を行うこともあります。

現在日本語学校への留学をしている学生のほとんどは、現地の留学支援業者を使って日本へ来ています。留学支援業者は高校や大学が行っている場合と、地域の日本語教室や塾などが行っている場合があります。現地営業はこの留学支援業者とつながりを持ち、学校説明会などを実施することが目標です。

現状留学生数の多いアジア圏から個人で日本語学校を探して留学する学生は多くありません。アジア圏で学生募集をするには留学支援業者からの信頼が必要不可欠です。現地の文化や営業方法などを理解していないと問題が多く発生してしまいます。また、留学支援業者からの信頼を得やすいこともあり、現地営業は現地出身の職員が担当することが多いです。

現地に営業事務所を持っている日本語学校では、事務所の責任者を日本で雇用していることが多いです。そして実際現地で営業活動をしている職員は現地で採用をしています。中には現地に住んでいる日本人を責任者として雇用していることもあると聞きます。

学生募集という日本語学校の経営に最も大切なポジションを担っている現地営業は、その国の留学支援業者に気に入られやすい現地に精通している職員が必要です。また日本の一般企業の営業とは少し違った特殊な営業をしなければなりません。海外で働きたいと考えている人にはやりがいのある仕事だと思います。

 

 

国内営業

続いては日本国内で営業活動をしている人を紹介します。

日本国内での営業活動は主に2つです。

1つ目が進学先の開拓。2つ目が就職先の開拓です。

同じ営業ですが、内容がまったく違うので分けて紹介します。

 

進学先開拓

進学先開拓の営業活動に大切なのは大学や大学院、専門学校の情報を集めることです。

学生に進学先を進めるときに必要な情報がいろいろあります。いくつか例を挙げると留学生を募集している学校や学部、入試の時期や募集要件、入試の内容、合格できる日本語レベルや副教科のレベル、学費や奨学金の内容、入学後の生活や講義内容、留学生向けのイベントや支援内容など様々です。

情報の中には学校のHPやパンフレット、募集要項を見ればわかることもありますが、中にはそれだけではわからない情報もあります。そんな時に営業担当者が必要になります。

営業担当者は進学先を訪問して、HPやパンフレットには載っていない情報を聞き出しに行きます。進学先にとってアピールポイントになる情報は簡単に教えてくれます。しかし中にはなかなか教えてもらえないものもあります。特に日本語学校が欲しい入試に関する情報はなかなか教えてもらえません。ここを聞き出すことができると、良い営業と言われます。

また、進学先への営業で大切なことがもう一つあります。それは指定校推薦枠の確保です。

指定校推薦枠は進学先と関係の深い日本語学校に与えられる入試枠です。指定校推薦枠で受験すると学費免除や減免、合格枠の確保など学生にとっていろいろなメリットがあります。

指定校推薦枠をもらうためには安定して学生を進学させることや、進学した学生の入学後の様子が重要になってきますが、それ以上に進学先の担当者と日本語学校の営業担当者の関係がとても大事です。

指定校推薦枠は待っていてもらえるものではありません。進学先の担当者の信頼を得て、こちらからお願いしなければいけません。そのためにも日本語学校の営業担当者の活躍が必要です。指定校推薦枠をもらうことができたら、一流の営業だと思います。

そんな進学先への営業は日本語教育を少し理解している日本人が担当することが多いです。日本語教育を理解している人が多い理由は、進学先の訪問時に日本語レベルの話や入試のことを話すときに、日本語教育のことを理解していた方が話しやすいからです。

日本語教師は難しいけど、日本語教育に興味がある人は、日本語学校の営業もおもしろいかもしれません。

 

就職先開拓

就職先開拓は卒業後に就職したい学生が就職できる企業を探す営業活動です。

業務内容は転職エージェントと同じです。外国人を雇用したい企業を探して求人情報をもらい、学生に紹介して就職試験を受けさせるという流れになります。

日本人の就活に比べると外国人の求人情報は多くありません。また、日本語レベルの制限もあり、留学生が就活するのはとても大変です。そこで日本語学校が企業へ営業し求人情報を確保することで、学生が就活しやすくなります。

日本では原則就職支援をするには、職業紹介業の資格が必要です。そのため大規模な日本語学校では有料職業紹介業の資格を持っていることがあります。有料職業紹介業の資格があると、学生が就職した際に紹介手数料をもらうことができます。日本語学校は学費収入以外の収益がない事業なので、紹介手数料は大きな収益になります。

学生にとっては就活がやりやすくなるし、日本語学校にとっても新たな収益につながるので、就職先への営業はメリットが大きいです。

そんな就職先への営業は日本人職員が担当することが多いです。就職に関しては特に日本語教育の知識がなくても大丈夫です。それよりもビザに関する知識が必要です。ビザに関しては就職後でも勉強できるので、心配することはありません。日本語学校の中で最も誰でも就職できるポジションだと思います。

                                     

 

以上日本語学校で働いている人の営業職員編でした。

日本語学校は教育業の1つですが、一般企業と同じで利益を出さなければなりません。そのためには優秀な営業が必要です。一般企業の営業とは少し違うところがありますが、毎月の数字に追われないのでプレッシャーが少なくやりがいのある仕事だと思います。興味がある人は一度求人情報を探してみてください。

 

全3回で「日本語学校で働いている人」を紹介してきました。

メジャーな業種ではない日本語学校のことを少しでも知ってもらえたらと思います。また少しでも興味がある人の今後の選択肢の1つになれば幸いです。

 

これからも日本語学校や日本語教育の情報を紹介していきます。引き続きよろしくお願いいたします。

ABOUT ME
タッチメン
日本語学校の専任講師として7年以上勤務をしていて、経験した留学生の疑問や先生の悩みを解決していきます。

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